日本学生支援機構の「減額返還制度」では、平成29年5月から制度が拡充されています。
- 減額金額の増額(月々の返す金額を減らす額を増やす)
- 適用期間の延長(この制度を利用できる期間がのびる)
この2点の変更がありました。
その内容もふまえて、「減額返還制度」について詳しく見ていきます。
目次
減額返還制度とは
まず最初に!
減額返還制度とは毎月の返還額を減額して返還していくことができる制度です。
毎月返していく金額を減らす制度っていうことですね。YAKO
「減額返還制度」の対象者
対象となるのは、災害、傷病、その他経済的理由で奨学金の返還が難しい人で、当初約束した割賦金を減額すれば返還可能な人となっています。
月々返していく金額を減らすと返せる可能性がある人が対象っていうことです。YAKO
「減額返還制度」の割賦金額の減額と返還期間
割賦金額の減額は
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この2つの方法から選択して返還していきます。
そして、返還期間はそれぞれ
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となります。
毎月の返還額が減額されるだけで、返還予定総額が減額される訳ではないので注意して下さい。
「減額返還制度」の適用期間
12ヶ月から最長15年(180ヶ月)まで延長可能です。 |
「減額返還制度」の採用年度別対象
平成29年5月の制度拡充によって対象者の枠が変わっています。
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となっています。
平成29年度以降採用の第一種奨学金では返還方法を「定額返還方式」と「所得連動返還方式」から選択します。
ですので、「定額返還方式」を利用されている方はこちらで説明している「減額返還制度」を申請するか、もしくは「所得連動返還方式」に変更することも可能です。
参考記事
「減額返還制度」の適用条件
この適用条件は割賦金額の減額2分の1、3分の1の両方に適用されます。
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1.災害、傷病、その他経済的理由によって奨学金の返還が困難
経済的理由の目安として、
- 給与所得者は収入300万円以下
- 給与所得以外の所得を含む場合は200万円万円以下
となっています。
そして、
- 本人の被扶養者について1人につき38万円
- 減額返還適用者は一律25万円
を控除することができます。(平成26年4月基準緩和)
2.奨学金返還において無延滞
延滞している場合でも、延滞を解消することで「減額返還」の願出をすることができるようになります。
3.口座振替(リレー口座)に加入
口座振替(リレー口座)に加入の手続きが済んでいない方は、加入手続きが必要です。
口座振替(リレー口座)未加入の人は、「リレー口座加入申込書」振替予定の金融機関から受付印をもらい、「預・貯金者控」のコピーを「奨学金減額返還願」に添付して願い出て下さい。
金融機関からの受付印がないものは不備となって手続きができません。
願出と口座手続きを同時にする場合は、「窓口用」という様式を使用します。
詳細は、申し込まれる時に再度確認して下さい。
4.月賦の返還方法のみ利用可能
「減額返還」では「月賦」返還の方法のみが採用されます。
「減額返還」を願い出る時点で年賦、半年賦、月賦・半年賦併用等、「月賦」以外の返還方法を選択している場合は自動的に「月賦」返還方法に変更されます。
そして、減額返還の終了後もそのまま「月賦」返還方法が継続されます。
それまで選択している返還方法によっては「月賦」返還に変更できない時期がある場合があります。
その為、希望する月から減額返還を開始できないこともありますので事前に奨学金返還相談センターで確認されることをオススメします。
5.個人信用情報の取扱いに関する同意書の提出
「個人信用情報の取扱に関する同意書」を提出が必要になります。
未提出の人は、「奨学金減額返還願」に同封して提出します。
中には、奨学生番号を複数持っているという方もいらっしゃると思います。
その場合は奨学生番号毎に「個人信用情報の取扱いに関する同意書」の提出が必要です。
「減額返還制度」の利息と保証料のメリット
「減額返還制度」を利用するにあたり、日本学生支援機構の奨学金ならではのメリットがありますのでご紹介します。
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1.有利子の奨学金の利息は変わらない
減額返還制度では、毎月の返還額が2分の1から3分の1に減額されるに伴って、返還期間も2倍、3倍と延長されます。
ということは、借入している期間が伸びている訳ですが、第二種奨学金(有利子)の利息の総支払額の変更はありません。
2.機関保証制度の保証料は変わらない
おなじく、機関保証による保証期間も延長扱いになるのですが、貸与中に支払済の保証料のみで延長した期間の保証もされるようになっています。
保証料を追加で徴収されることはありません。
「減額返還適用中」の注意点
減額返還が適用されている期間に2回続けて振替できなかった場合は、延滞が発生した時に遡って減額返還の適用が取り消されます。
そして、減額返還が適用される前の当初の割賦金を延滞額として算出した延滞金を加えた額を返還しなければならなくなります。
さらに、奨学金の返還を3ヶ月以上延滞すると、個人信用情報機関に延滞者として登録され、返還完了まで情報が更新されます。
そして、返還完了後も5年間情報が登録されます。
「減額返還」申し込みの提出書類
「減額返還」申込の提出書類
次に、「減額返還」の申し込みに必要な書類を用意します。
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そして、経済的な基準を示す証明書として
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基本的に、3つのうちどれか1つを提出します。
「減額返還」へ願い出る事由によっては証明書がそれぞれ変わってきますので、申し込まれる際に確認して下さい。
新卒等(初回願出)の場合の提出書類の簡素化
平成26年12月以降の貸与終了者は、卒業・退学した翌年6月までに「減額返還」を願い出た場合は、証明書類の提出が不要になります。
これは、卒業・退学後の初回申請時に限ります。
3月の卒業で貸与が終わった人は、返還がはじまる前の願い出になります。
年度の途中で貸与が終了している場合は、既に返還が始まっている人もいます。
もし、「減額返還」の利用を考えている場合は「卒業・退学した翌年6月まで」という時期を忘れずに申込みを済ませておきましょう。
「減額返還」の返還額と返還期間の実例
最後に、「減額返還」が適用されて実際に減額返還する際の金額を例を上げてイメージしてみます。
返還減額を2分の1にする場合
(引用:日本学生支援機構) |
12ヶ月(1年間)2分の1に減額してもらう場合です。
12ヶ月の間、2分の1の金額を返還することになりますので、当初の予定金額では6ヶ月分返還できたことになります。
減額期間の12ヶ月が終わると、当初の返還金額に戻って返還が再開され、その金額での返還期間が6ヶ月(12ヶ月-6ヶ月)伸びることになります。
返還減額を3分の1にする場合
(引用:日本学生支援機構) |
12ヶ月(1年間)3分の1に減額してもらう場合です。
12ヶ月の間、3分の1の金額を返還することになりますので、当初の予定金額では4ヶ月分返還できたことになります。
減額期間の12ヶ月が終わると、当初の返還金額に戻って返還が再開され、その金額での返還期間が8ヶ月(12ヶ月―4ヶ月)伸びることになります。
それぞれ、180ヶ月まで延長が可能ですので適用の要件に当てはまる場合はその都度延長していくことになります。
ご自分の具体的な返還総額等は「スカラネット・パーソナル」で確認することができます。
「スカラネットパーソナル」とは
奨学金を貸与・給付中の方や奨学金を返還中の方が、ご自身の奨学金に関する情報をインターネット上で閲覧できる情報システムです。貸与・給付期間や月額を確認したり、返還の総額や振込口座の確認が可能です。
(出典:日本学生支援機構 スカラネットパーソナル)
まとめ
今回は、奨学金の返還救済制度の一つ「減額返還」について見ていきました。
「減額」と名前がついているので返還総額が減るのではないかと思ってしまいがちですが、月々の返還額を減らして返還期間を延ばしながら総額を少しずつ返済していこうという制度です。
貸付利子も保証機関の保証料の追加で徴収されることはありませんので、返済が苦しい状態にあるときは必ず自分から申請して返済の負担を減らしていきましょう。
それでも、難しい場合は「返還猶予」や「所得連動返還方式」という選択もありますので、それぞれの特徴を知って利用して下さい。
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